クラウドファンディングの最終報告

以下はピカリかがくで行ったクラウドファンディングの最終報告の転載となります。元サイトはこちらです。

ピカリかがくのメンバーの化学の魅力を伝えたいという想いに共感頂き、クラウドファンディングにご支援を頂き改めて有難うございました。
本クラウドファンディングは2023年8月2日に募集を開始し、9月30日に募集を終了しましたが、多くの方にご寄付を頂きました。
その後「化学のなかでも特に視覚的に分かりやすい光化学の面白さに触れることで、より多くの中高生に化学に対する興味を持ってもらうこと」を目的としてアウトリーチ活動を行ってまいりましたが、2025年3月30日をもって本クラウドファンディングのプロジェクトは実施完了となります。
もちろんこれからもピカリかがくのメンバーで化学の魅力を伝える活動を継続して参りますが、一つの区切りということで本プロジェクトの最終のご報告をさせて頂きます。
 
本プロジェクトで行う予定としていた活動はこれらの項目となります。
・光化学に関する実験動画の作成と配信
・離島や僻地を含む中学、高校での出前授業・実験
・九州大学での実験体験
・科学館や書店などで実施するサイエンスカフェ、実験実演
・ホームページや書籍を通じた光化学に関する情報提供
各項目について、これまでの活動報告と重複する部分もありますが、以下にまとめとしてご報告させて頂きます。
 
・光化学に関する実験動画の作成と配信
 
光化学を視覚的に紹介するための実験動画を作成しました。まずは動画を撮影するための機材を購入するところから始めました。光化学の魅力を伝えるため、また研究者へのインタビューを良い画質で撮影するため、動画撮影が可能な一眼レフカメラを購入しました。また、動画で重要となる音声を高品質に取り込むため、カメラに取り付けることが可能なピンマイクを購入しました。カメラを固定するための三脚も購入しました。慣れない動画撮影でしたので、練習として九州大学内でピカリかがくのメンバーへのインタビュー動画を撮影し、その後の撮影本番に臨みました。
 
動画の編集にメンバーが慣れることにかなり苦労し、また作業自体にかなりの時間がかかり編集中の動画もまだ多くありますが、大学院生メンバーの頑張りによりようやくいくつかの動画を公開することが出来ました。
福岡舞鶴高校の皆様にご協力を頂き、フォトン・アップコンバージョンを紹介する出前実験を実施し、その様子を動画にまとめてYouTubeにて公開しました。
https://www.youtube.com/watch?v=U7Hj7TEWxmM
 

また、京都大学の京都大学 阿部竜研究室と京都橘高等学校の皆様にご協力いただき、光触媒の合成とデモンストレーションを行う動画を撮影させて頂き、YouTubeにて公開しました。
 
・人工光合成に関する研究解説
https://youtu.be/Wkty0ednn-E
・光触媒材料の作製実験
https://youtu.be/9RFAgCatAXQ
・高校生による研究者インタビュー(京都大学 阿部竜教授)
https://youtu.be/3CMpi_s3SWw
・高校生による大学院生インタビュー(京都大学 阿部研究室)
https://youtu.be/NBF97yMFEqU
 
阿部先生による解説動画の撮影準備風景です。

 
阿部研究室の鈴木先生に実験の指導をして頂いている様子です。
光触媒の合成から水からの水素発生の実験まで行って頂きました。

 
更には最先端の研究を行っている研究者の生の声を届けることが中高生にとって化学に興味を持ってもらう良いきっかけになると考え、研究者インタビューを行いました。
京都大学 大宮寛久先生、北海道大学 長谷川靖哉先生、
京都大学 深澤愛子先生、千葉大学 矢貝史樹先生にご快諾頂き、インタビューをさせて頂きました。実際に高校生の方に直接質問して頂いた方が中高生に届きやすい内容になると考え、福岡舞鶴高校と札幌西高校の高校生の皆様にもインタビューアーとして参加して頂きました。
 
 


 
研究者インタビュー動画は現在も編集作業が続いており、編集が完了したものから定期的にYouTubeにて公開して参ります。
 
・離島や僻地を含む中学、高校での出前授業・実験
 
近隣の高校である福岡舞鶴高校の総合的な学習の時間 “舞プラン” にて、ピカリかがく教員で協力して「光で楽しむ化学」という名前のコース提供を行いました。2023年度は楊井・宮田・小野・若林、2024年度は楊井・若林・宮田・アルブレヒトが出張授業や九州大学に高校生を招いて実験を行い、光を通じて合成化学、材料化学、生化学などの様々な化学分野の魅力を共有しました。各回高校生から「楽しかった」「初めは難しいと思ったけど丁寧に教えてもらえて興味をもてた」「進路として理系を選びたいと思った」などの反響をいただけました。この取り組みは、次年度も継続して行えたらと考えています。
 


 

 
メンバーの宮田が、母校でもある山口県山口市立大殿中学校で中学生の皆さんに化学・科学の楽しさを伝えに出張授業に行ってきました。
①中学1年生102人に対して特別授業「身近な光の不思議を調べよう!」
②昼休みの時間に出張科学館「ピカリかがく実験箱」 
③放課後に特別講義「ノーベル化学賞2023 “量子ドット” 解説」
の三つの活動を行ってきました。普段触れることのない化学の側面に触れて、多くの中学生の知的好奇心を刺激できました。普段は理科が苦手に感じていた生徒さんたちも、ディスプレイに隠れた秘密を顕微鏡で発見してとても楽しそうでした。参加してくれた生徒さん達には、協賛いただいているルミカ株式会社さんのケミカルライトもプレゼントしました。
 
 
離島・僻地での出前授業については、2024年11月2日に、長崎県の五島列島(上五島地区)にある県立中五島高等学校の文化祭に登壇する、という計画を進めていました。新上五島町の教育委員会や役場広報課のお力添えもいただき、上五島地区にお住まいの方に広くご参加いただけるよう、広報誌や回覧板等を通じた呼びかけも行っていました。
ところが、あいにくの荒天に見舞われ、11月1日の博多港発の夜行便のフェリー、2日の佐世保港発および長崎港発のフェリーや高速船が軒並み欠航。急遽、1日の晩に「身近な光化学」をテーマにした講義動画を撮影し、その動画を中五島高校で放映していただく、という代替手段を採らざるを得ませんでした。動画はまたYouTubeに限定公開し、上五島地区の関係者の方々にもご覧いただきました。
https://youtu.be/Kt34p44CHn8
五島列島での出前授業については、2025年度の開催を目指して、五島市や新上五島町の関係者の方々と引き続き連絡を取り合っています。次こそは天候に恵まれますように!
 
・九州大学での実験体験
 
 2023年12月13日大利中学校の2年生80名ほどを筑紫キャンパスに迎えて「ディスプレイの仕組みに触れてみよう」という体験型授業を実施しました。光の色と波長、エネルギーの関係を説明した後にスマートフォンの液晶ディスプレイを顕微鏡で拡大して見てもらいました。この体験を元に人間の目の仕組みと三原色について学び、光の重ね合わせ(加算)や特定波長の吸収(減算)によって様々な色が表現できることを解説しました。アルブレヒト研究室で実際に開発している発光材料が光っている様子も見てもらいました。参加してくれた生徒の皆さんからは、たくさんの質問をもらいました。実際に使用しているスマートフォンを拡大して仕組みを見ることで、記憶に残ったのではないかと思います。

 
 2024年5月18日には九州大学筑紫キャンパス(総合理工学府)のオープンキャンパスに合わせて、「スマートフォンの仕組みを学ぼう」という企画の中でディスプレイの仕組みを学ぶ企画を出展しました。フルカラーのディスプレイはピクセルと呼ばれる3原色(青・緑・赤)の光を発する小さな点の集合体になっていて、各色の割合をコントロールすることで様々な色を表現しています。今回の体験企画では実際に来場者の皆様のスマートフォンの画面を顕微鏡で覗いてもらいました。白い画面だと思っていたのが、顕微鏡で拡大すると3色から成っていることが分かると驚きの声が上がっていました。3原色の配置はメーカーや機種、液晶か有機ELかといった方式によっても異なるため、来場者同士で見える顕微鏡像を比べて楽しむことも出来ました。参加者には自身のスマートフォンの顕微鏡像をプリントしたオリジナルのカードを記念品として配布し好評でした。大人から子供まで150名を超える来場者に楽しんでもらえました。
 九州大学での体験から未来の光化学者が育ってくれたらなと思っています。

 
・科学館や書店などで実施するサイエンスカフェ、実験実演
 
2023年11月19日に小野が体験型子ども科学館O-Laboにお邪魔して、大分県の中学生を対象にした科学実験を行いました。日常生活でよく目にするアイテムである冷えピタを使い、その吸水ポリマーがどのように機能するのかを探究しました。膨らんだ冷えピタを触ってそのぷよぷよとした感触に興奮したり、エナジードリンクに浸すと発光する様子に驚いたりした様子が印象的でした。また、ポリマーの仕組みや静電反発、浸透圧などの科学的概念についても、実験を通じて理解を深めることができました。
2024年5月5日、宮田が福岡市科学館の「ジュニア科学者養成コース ニュートンコース」の光化学の講師として登壇し、小学生の皆さんと一緒に光化学が関わる7つの実験を楽しみました。3時間にわたるボリューミーな実験と講義で、今まで行ってきたアウトリーチ活動の集大成とも言える内容になりました。親子で楽しそうに意見を交わしている場面も多く、非常に手応えを感じました。

 
2023年10月に宮田が第97回サイエンスカフェ@ふくおかに登壇し、「超元気な分子の謎に迫る!~光エネルギーを手にした分子の底力~」というタイトルで講演しました。サイエンスカフェ@ふくおかは、金曜日の夜に福岡・天神のオフィス街で行われているロングランの学問サロンです。40名の参加者全員が好奇心に溢れていて、第一部の講演から第二部の座談会、最後の最後まで質問の絶えない活発な会でした。光化学の出前授業や実験教室は、子どものみならず、大人にも大いに楽しんでもらえるのだと実感しました。

 
九州大学伊都キャンパスにほど近い九大伊都蔦屋書店にて、定期的にイベントを行っています。2023年・2024年の夏休みと2025年3月に実験教室、2023年11月にノーベル賞解説会を開催しました。また、メンバーの宮田は2ヶ月に1度程度、ビブリオバトル(5分間のプレゼンと3分間の質疑応答という制限時間内でオススメの本を紹介するゲーム)に登壇し、「子どもの頃の自分に勧めたい、科学を好きになれるマンガ」「夏休みを満喫する大冒険のSF小説」など、サイエンスにまつわる本について語っています。九大伊都蔦屋書店でのこうした活動は今後も継続していく予定です。

 
・ホームページや書籍を通じた光化学に関する情報提供
 
クラウドファンディングの期間が終了した後も光化学の魅力を伝えるアウトリーチ活動のプラットフォームとして、魅力的なホームページを作ることは大変重要だと考えました。そこで親しみやすいキャラクターのアイデアをメンバーで相談して考え、キャラクターデザインが得意なピカリかがくメンバーの小鳥遊 枝折(ペンネーム)が原案を考えました。
光化学に関係するデザインや、ピカリかがくに関わるメンバーの研究をメインに、化学に関係する意匠を服装等のキャラデザに組み込みました。光化学でよく用いられる分子構造や、光化学の現象を説明するのに用いられるエネルギー状態図や模式図を服装やキャラの瞳などデザインに組み込み、ピカリかがくを象徴して、みんなが見て光化学のキャラだ!とわかり、親しんでもらえるようなかわいいデザインを目指しました。化学は魔法のようだと思うことがあるので、魔女っぽい白衣の少女のデザインにしました。
キャラクターの名前は皆で考え、ピカリかがくを更に馴染みやすくした「ピカリん」に決まりました。

ホームページにはクラウドファンディングの寄付の際にご同意頂いた方々のお名前も記載させて頂きました。修正や追記をご希望の方は楊井(yanai@chem.s.u-tokyo.ac.jp)までメールでご連絡頂けますと幸いです。
 
完成したホームページはこちらです。素晴らしいプラットフォームを構築することが出来ましたので、これからインタビュー動画や光化学デモンストレーション動画など、継続して情報発信を行ってまいります。
https://pikari-kagaku.jp/
 

 
出前授業などを通じて知り合った中学生や高校生から、「今の子どもたちは、アニメ・マンガ風のミュージックビデオが楽曲と一体になった動画コンテンツを好んで視聴している」ということを教わりました。Ado、YOASOBI、HoneyWorks、多様なボーカロイドなどの楽曲がそのような動画コンテンツに該当しますが、若い人々を中心に大変な人気を誇っています。
そうした中学生や高校生の声にインスパイアされ、光化学の内容をイメージしてもらえるような主題歌とPV動画を作成しました。主題歌は音楽のプロに、PV動画はデザインのプロにそれぞれ作成を依頼し、ピカリかがくのメンバーとの議論を何度も重ねて完成を迎えました。楽曲名は「ピ!ピ!ピ!ピカリエイト!~ピカリかがくの歌~」と名付けて頂きました。
また、以下のように分かり易く楽曲リリースのプロモーションを行って頂きました。
 
『九州大学のアウトリーチプロジェクト「ピカリかがく」から生まれた、光化学の面白さを伝えるための楽曲「ピ!ピ!ピ!ピカリエイト!~ピカリかがくの歌~」。
 
中高生に“化学って難しそう…”というイメージをくつがえし、“化学って面白い!”と感じてもらうために制作された、サイエンス×ポップミュージックの新感覚エンターテイメントです。
 
まるで光子が弾けるようなサウンドと、耳に残るキャッチーなメロディ。
遊び心満載のリリックの裏には、光化学の大切なエッセンスがぎっしり詰まっています。YouTubeチャンネル「ピカリかがく」(@pikari_kagaku)との連動企画で、視覚・聴覚の両方からサイエンスの魅力を届けます。
 
STEAM教育の一環としても注目される、理系の未来を明るく照らす一曲です。』
 
「ピ!ピ!ピ!ピカリエイト!~ピカリかがくの歌~」の楽曲とPVは
4/10「フォー・とお(photo)の日」
にリリースする予定としております。
リリースに向けたCMを作成致しましたので、もし宜しければご覧ください。リリースされましたら、情報の拡散にご協力を頂けますと幸いです。
https://youtu.be/zcxYCckbjfo?si=TcIoryliM0SITNBW
 
以上の活動は皆様の寄付があって初めて可能となりました。頂いたご寄付は以下の項目にそれぞれ使用させて頂きましたのでご報告いたします。
【消耗品】 
動画撮影に必要なワイヤレスピンマイク、イヤホン、モバイルバッテリー、外付けSSDなどの物品に加え、ディスプレイ画面を拡大する実演のためのデジタル顕微鏡、アップコンバージョンを示すゲルを作るための原料、クロスカップリングを実演するための試薬を購入しました。
【備品(デジカメ4台)】 
高画質で動画撮影が可能なデジタルカメラを4台購入しました。研究室の動画撮影では3台のカメラで異なる角度から撮影を行いました。研究者インタビューでは2台のカメラでインタビューを行う側と行われる側の撮影を行いました。2名の研究者インタビューを並行して行うこともあり、その際は4台のカメラを使用しました。
【旅費】
他大学の先生方に研究者インタビューを行うための旅費を支出しました。教員1名、学生1~2名のチームで研究者インタビューや実験実演動画の撮影を行うために出張を行いました。
【アルバイト代】
中学、高校への出前実験、科学館や書店で実施するサイエンスカフェ、実験実演、研究者インタビューなどの動画を編集に対する謝金として、実働時間に基づきピカリかがくの大学院生メンバーに支払いました。
【HP作成費用】
ピカリかがくのHPを作成しました。中学生や高校生、より幼い子どもたちの目を惹きつけるHPになるように、デザイン制作事務所 株式会社ヤップに制作を依頼。学生イラストレーター・小鳥遊枝折のデザインによるキャラクター「ピカリん」を案内人にした、明るく楽しいHPになりました。
【音楽PV作成費用】
出前授業などを通じて知り合った中学生や高校生の声にインスパイアされ、光化学の内容をイメージしてもらえるような主題歌とPV動画を作成しました。こちらもデザイン制作事務所 株式会社ヤップに作成を依頼しました。
【READYFORへの手数料】
九州大学とREADYFORの間で決められた所定の割合の手数料です。
 

2025年3月31日を持って本クラウドファンディングのプロジェクトは終了となりますが、もちろんこれからも化学・光化学の魅力を伝える活動を続けて参ります。
本プロジェクトを通じてHP、キャラクター、主題歌・PV、実験実演のネタ、動画撮影と編集の技術、といった多方面に渡るアウトリーチのための基盤が整ったことになります。また、ピカリかがくの活動に共鳴してメンバーに入ってくれた仲間が九州大学に留まらず北海道大学、筑波大学、東京大学、立命館大学、京都大学、大阪大学と全国に広がっています。更には大学以外でも馳月 基矢さん(小説家)、天海朱音さん(声優・ピカリん役)にもチームに加わっていただき、大学のメンバーだけではカバーできない部分を強力にサポートして頂いています。
今後の活動としては、これまでに撮影した動画や新しく撮影する動画の定期的な配信、定期的なサイエンスイベントの実施、出前講義、などを行う予定です。また、光化学に関係する書籍の出版も編集者の方と相談させて頂いています。
ピカリかがくの活動を通じて化学をイメージしてもらうことが簡単ではないことも分かりましたが、視覚的に分かり易い光化学がそのための高いポテンシャルを有し、研究者自身が研究の面白さや魅力を伝えることの重要性も再認識しました。これからもピカリかがくの活動を継続し、化学の未来を明るくすることに少しでも貢献できればと考えておりますので、引き続きの応援のほど何卒宜しくお願い申し上げます。
改めてクラウドファンディングへのご寄付を頂き、アウトリーチ活動を行う機会を頂き誠に有難うございました。
 
ピカリかがく メンバー 一同